ナショナル・ジオグラフィックの記事から。
発達障害クリニック附属発達研究所神尾陽子先生の話をインタビューするという形の連載です。
「まず、発達障害というもうちょっと大きな括りから入ると思います。今、日本の国民でその言葉を聞いたことのある人は、7~8割だという調査があって、かなり知られていますから。そして、その発達障害の中に自閉症も入ります。まだ原因などははっきり特定されていないんですが、最近の研究では、もう胎児のときから脳が平均的なものとは違う発達をすることが分かってきています。親や専門家すら気づかないときから、脳の大きさ、神経細胞と神経細胞がつながっていくプロセスなどが、ちょっとずつ違うわけなんです」
神尾さんは尽きない泉のように溢れ出るかのような語り口で、まずは「胎内から始まっている」ということを強調した。ぼくはそのこと自体には納得しつつも、軽く違和感を覚えた。「なぜ、この件を最初に強調するのだろう」と。
尋ねるとすぐに疑問は氷解したので、まずはその点を注釈しておく。
「ちょっと前までは、子どもが自閉症になるのは育て方が悪いからだと言われていたからなんです。つまり、親、特に母親が責められて、愛情が足りないなどと言われてきたので。それは、そうじゃないんだよということは、今も強調する必要がありますね」
もう本当にその通りですね。
どれだけ「心配した」フリをした人たちに心無い言葉を受けてきたことか。
では、自閉症、自閉スペクトラム症とは、どんな状態を指すのか。
「──自閉スペクトラム症というのは、行動をベースにしてつくられた症候群です。まずは、対人関係やコミュニケーションに顕著な特徴があって、専門家が見れば1歳くらいからかなり分かるし、2歳になるとほぼ確実に分かります。具体的には、『共同注意』といって、定型発達のお子さんなら、1歳半になれば、おかあさんがモノの名前を言わずにただ指を差せばそのモノを見ますよね。また、いつもと違うことや少し怖いことがあった時に、おかあさんの顔を見てその反応を確かめたりします。これは『対人理解』の領域ですね。こういったことが、自閉スペクトラム症のお子さんは遅れるんです」
「──あと、もう一つ重要な特徴は『こだわり』です。これは、専門的には『興味の限局と反復常同性』と言います。まず『興味の限局』というのは、例えば、ポケモンばっかりが好きとか、電車ばっかり好きとか、興味が偏っていてそこから逸れないということです。一つのことに何か注意がいったらなかなか他に注意を移せないし、一つのことを信じたらそれを訂正するのは大変です。ネガティブにいえば柔軟性が乏しく、ポジティブにいえば一つのことを徹底してやり抜くという両面があります。で、『反復常同性』というのは、知的障害のあるお子さんだったら、手をひらひらしたりするんですよ。これは目的がよくまだ分からないんですが、やっぱり正確に同じパターンを繰り返して、その刺激のパターンは一定であるっていうことにこだわっているっていう」
なにはともあれ、対人関係やコミュニケーションに特徴があり、こだわりが強くそれが生活上の困難につながる、というのが自閉スペクトラム症の特徴だという。
とても丁寧な説明ですね。
全文はこちらで読めます。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/19/042000014/042100002/