2017年09月07日読売新聞の記事から。
幼少期から青年期まで子どもの精神障害を専門的に診察、治療できる医師を養成する部門が福井大に設置され、9月から本格的に始動した。発達障害をはじめとする複雑な病状を見極めるため、実績のある医師と臨床心理士を招き、国内有数の訓練・指導体制を整えたという。設置期間は今年度から5年間で、専門医不足の解消を図り、診療と研究の成果を広めていく。
福井大に精神障害を専門的に診察、治療できる医師を養成する部門設定
発達障害の専門的なお医者さんは本当に少ないですよね。
私たちも色んなところへ行って医療的な判断が必要と思っても、どこもかしこもいっぱいで結局初診まで半年待ってようやく診断をしてもらいました。
緊急性ということで言えば、もちろん外科や内科ほどは急がないのかも知れないですが、そういった子どもを持っている親からすれば、早く的確な診断をして頂いて、公的な支援を受ける、自宅で出来ることを行う等の次のステップに早く進みたいと思っています。また、お医者さんに診てもらって安心したいという気持ちもありました。
ですので、この様に医師を増やして頂けるのはありがたいですね。
日本をはじめとする先進国で発達や情緒に問題のある子どもは増えており、文部科学省が2012年に行った全国調査では、「学習面または行動面で著しい困難を示す」とされた小中学生の割合は6.5%いた。教育や医療の専門家の間では、この回答に含まれないが、発達に関わる様々な問題を抱える子どもが多いと指摘されており、30人学級に2、3人、全体の15~20%程度いるとの意見もある。
一方で、日本児童青年精神医学会の認定医は全国でも325人にとどまるなど、医師が足りないのが現状だ。
同大は09年、発達障害、精神病など様々な研究に当たる「子どものこころの発達研究センター」の前身となる機関を開設。今回の養成部門は、「児童青年期こころの専門医育成部門」として今年4月、センター内に設置された。費用は、医師確保を急ぐ県が、寄付研究部門として年約3600万円を支出する。
客員教授には、長年、臨床の現場で活躍する児童精神科医で、発達障害への認知度を高めた杉山登志郎さんが就任。准教授には、トラウマ(心の傷)の対処が専門の医師森本武志さんと、拒食など摂食障害が専門の鈴木太さんが、特命助教には、面談などを通じた認知行動療法が専門の臨床心理士、牧野拓也さんが就いた。
高度な知識を持った医師を養成するため、3年間の受講期間に可能な限りの課題を集約。福井大病院で週4日以上勤務▽1、2年目は指導医らの下で多くの患者や家族を担当▽診断や治療の基本となる面接の技量を高める▽2、3年目には症例の学会発表もこなす――としている。また、1年ごとの指導受け入れを数人程度に限り、密度の高い内容をマンツーマンで伝授する。
杉山さんは、現在の精神医学について、いまだに表面的な兆候から症状を区別するのが主流で、「科学的な根拠のある診断ができていない」と指摘。一方で、数少ない専門家には「患者が押し寄せている」という。
今回の養成部門には、専門的な知見のある指導者を配置したとしており、「日本に例のない、納得いくものができた」と話している。
鈴木さんは「現在の国内の厳しい診療状況から脱するのが我々の仕事」と力を込め、上田孝典センター長は「質の高い研修ができると心強く思う」と話す。